◆ 3DAモデル(EU)と変換データ(日本)との圧倒的な違い

3DAモデル(3D図面)と3Dデータには本質的な違いが存在します。一般的に、3Dデータは形状や寸法などの視覚的情報のみを含むものであり、設計や製品の可視化、シミュレーションに使用されます。これに対し、3DAモデルは製品の形状情報に加え、製造や品質管理に必要な製品製造情報(PMI: Product Manufacturing Information)を含む高度なデータ形式です。PMIには寸法公差、表面仕上げ、溶接指示など、製造プロセスにおける具体的な情報が含まれ、設計段階から製造、検査に至るまでの各工程をシームレスに結びつける役割を担います。したがって、3DAモデルは単なる設計図としての役割を超え、製造業におけるデジタルツインの概念を具現化するものであり、製造工程全体を通じて設計意図を一貫して伝えるための不可欠なツールです。

一方、従来の3Dデータは設計意図を明確に伝えるための補助的な役割に留まることが多く、製造に至るまでのプロセスに関与する情報は含まれていません。そのため、3Dデータを製造に利用する際には、別途アノテーションや技術指示書を併用する必要がありますが、これはエラーや情報の不整合の原因となるリスクがありました。これに対し、3DAモデルは製造に関する情報を一元管理することにより、情報伝達の精度を高め、製造工程における無駄や誤解を最小限に抑えることが可能です。特に、デジタル製造業における完全な自動化を目指す場合、3DAモデルの活用は不可欠であり、設計から製造、さらには品質保証に至るまでのデータフローを最適化する手段となります。

3DAモデルと3Dデータのもう一つの違いとして、データの互換性が挙げられます。3DAモデルは多くのCADシステムやフォーマットに対応しており、国際的な製造規格や標準に基づいて運用されます。特にAP242やISO 10303といった規格に準拠した3DAモデルは、国境を越えたデータのやり取りを円滑にし、グローバルなサプライチェーンにおいてその有効性が発揮されます。これに対して、従来の3Dデータは互換性が限定的であり、異なるCADシステム間でのデータ変換には多くの課題が伴います。そのため、3DAモデルはデータの変換や管理の効率化を図るための標準として、特に欧州において広く普及しています。

また、3DAモデルはデータの一貫性と精度を保証するため、製品ライフサイクル全体を通じて正確な情報を提供することが求められます。特に、製造における誤差や不具合を防ぐためには、設計段階でのデータが忠実に再現され、必要なアノテーションが適切に伝達されることが重要です。これにより、製品の品質管理や最終検査においても、設計意図が明確に反映され、仕様に基づいた正確な製品が製造されることが保証されます。

日本と欧州における3DAモデルの運用には、規格や技術レベルの違いが見られます。欧州では、AP242やISO 10303などの厳格な規格に基づく高度な3DAモデルが採用され、特に複雑なアセンブリデータの管理や交換において高いレベルの精度が求められます。これに対し、日本ではまだこれらの規格が十分に普及していないケースが多く、データの変換や管理において、欧州に比べて遅れが見られることがあります。今後、日本においても3DAモデルの普及が進むことで、製造業全体のデジタル変革が加速し、効率化が図られることが期待されます。

 

3DAモデルと3Dデータの違い
2024年10月17日